劇場




私には自問自答の習癖がある。自然史博物館の撮影を始めた頃のある晩、私は半覚醒状態で

ある一つのビジョンを得た。そのビジョンに至る自問はこうであった。「映画一本を写真で

撮ったとせよ。」そして自答は次のようであつた。「光輝くスクリーンが与えられるであろ

う。」私はさっそく与えられたビジョンを現実に起こすべく、実験に取りかかった。イース

トビレッジの1ドル劇場に、旅行者を装って大型カメラを持ち込むことに成功した。映画が

始まったのでシャッタアを開けた、絞りは取りあえず全開だ。2時間後、映画の終わりと共

にシャッタアを閉じた。その晩、現像をした。そしてそのビジョンは、赫葯として私の瞼の

裏に昇った。




- 杉本博司