海景

 

水と空気、このあまりにも当たり前のように在るために、ほとんど注意を引くことのない存在

が、私達の存在を保証している。この世の始まりは「水と空気が与えられたとせよ」という神

話から始まったのだ。生命現象は、水と空気、それに光も加わって発生した。どうしてそのよ

うなことになったのか、については偶然という神が存在した、とでも言っておくしかない。太

陽系の中で、水と空気が保たれている惑星があって、おまけに太陽から適度の距離にあって、

たまたま温度が生命発生の条件に適していた。そんな惑星なら、この広い宇宙の中にもう一つ

ぐらいあってもよさそうなものだが、見渡すかぎり、似たような惑星はひとつとして見つける

ことはできない。このありがたくて不思議な水と空気は、海となって私達の前にある。私は海

を見る度に、先祖返りをするような心の安らぎを覚える。そして、私は海を見る旅に、出た。

 

 

- 杉本博司