仏の海, 1995

私がニューヨークに移住した1970年代なかば、ニューヨークのアートシーンではミニマルアートとコンセプチュアルアートが主流だった。抽象化された観念を

眼に見えるようにするとどうなるか、という実験である。私は同じような動機で制作された美術が12世紀の日本にもあったことに気がついた。西方浄土という観

念化された死後の世界を、この世に模型として再現してみるとどう見えるか。それは千手観音像の一千体のインスタレーシヨンという形で、八百年の歳月を経た今

日に伝わっている。7年もの時間をかけて私は撮影の許可を得ることができた。私は撮影に先立って、近世や近代に付け加えられた様々な装飾を取り除いた、現代

の蛍光灯もしかりである。こうして私は、東山から立ち登る朝日を受けて燦然と輝く千体仏を、平安貴族たちが見ていた時と同じ様に再現してみたのだ。現代の観

念芸術は八百年後にも残るだろうかと思いながら。 
                               

 

 

- 杉本博司